たつみの自習室

2013年5月 3日 金曜日

医療機関の労務 セクハラ②

こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。

セクハラに関する裁判例をご紹介します。

* T病院長事件(平成12年千葉)

女性准看護師Xさんは病院長のYから、車中や院内で肩や胸、大腿部、臀部などを触るなどの行為を繰り返し受けていました。ある時、XさんはYと口論した際、自分に非のないことでYに罵倒され、反省文を書かされました。これを契機としてXさんは、自分の意に反して長期間にわたり、執拗にわいせつ行為や卑猥な性的言動を受けました。それにより身体的・精神的に苦痛を与えられたとして、XさんはYに不法行為による慰謝料を請求しました。

判決は、Yの行為は、社会通念上許容される限度を超えた不法行為に当たるとして、精神的苦痛に対する慰謝料70万円の支払いを命じました。

裁判所は、この事件で、性的自由、人格権の侵害について、次のようなことを述べています。

男性上司が女性部下の身体に接触したとしても、直ちに女性部下の性的自由、人格権を侵害したものとは即断できない。接触した身体の部位、接触の態様、程度、接触行為の目的、不快感の程度、行為の場所・時刻、職務上の地位・関係等の諸事情を総合的に考慮して、社会通念上許容される限度を超えるものであるときは、相手方の性的自由、人格権を侵害したものとして違法性を有する。

つまり、この度の事件では、院長YはXさんに対して、社会通念上許容される限度を超えて、〇〇の目的で、Xさんの〇〇を、〇〇ように、〇〇の程度、〇月〇日の〇時に〇〇の場で、触った。Xさんは〇〇の程度、不快感を持った。この状況を総合的に考えれば、Xさんの性的自由と人格権を侵害したといえる。だから違法だ。と裁判所が判断したということです。

このような類の事件の事実確認や裁判での陳述は個人的には聞くに耐えないし、まして当事者のXさんにとっては計り知れない心理的苦痛があったと思います。

でも、このままやられっぱなしで泣き寝入りしていては、Yへの怒りの収めどころがありません。傷ついた自分が立ち直る力も得られません。また、Yが人を替えて同じことをするかもしれないと考えれば、公の場でYを裁いてもらい、二度と過ちを繰り返さないように約束させる必要があると考えたかもしれません。訴訟までもっていったということは、「絶対に許さない」というXさんの強い意志が働いたと想像されます。

セクハラの加害者は被害者が強く拒否すると行為をエスカレートさせる傾向があります。ばれるのを恐れて力ずくで黙らせようとします。権力的な圧力、理不尽な叱責から、脅迫、暴行にまで及んでしまう場合もあり、危険です。

管理側が見て見ぬ振りをするのもいけません。職場環境を適切に保つ配慮義務を怠ったとされ、責任を問われる場合も多々あります。組織全体としての予防策、起こってしまってからの対応マニュアルなど、準備しておく必要があります。


投稿者 たつみ社会保険労務士事務所 水本智

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