たつみの自習室

2013年5月 9日 木曜日

医療機関の労務 パワハラ②

こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。

今日はパワハラに関する裁判例を一つ紹介します。

* S病院事件(平成16年さいたま)

准看護師Aさんは、職場の先輩男性看護師Yらから3年にわたり、冷やかし、からかい、嘲笑、悪口、他人の前で恥辱・屈辱を与える、叩くなどの行為を受け、いじめを苦に自殺しました。このためAさんの遺族Xが男性看護師Yと病院Zに損害賠償を請求しました。

この件に対して次のような判決が出されました。

男性看護師Yには不法行為責任があり、病院Zには安全配慮義務違反という債務不履行があり、Aさんへのいじめと自殺の間には因果関係があるとして、男性看護師Yに1000万円、病院Zに500万円の損害賠償の支払いを命じました。

裁判所は安全配慮義務について次のように言っています。

病院Zは、Aさんが雇用契約に基づき労務を提供する過程において、信義則上、その生命・身体を危険から保護する安全配慮を尽くす義務、具体的には、職場の上司・同僚からのいじめ行為を防止し、生命・身体を危険から保護する義務を負っています。

職場でのいじめは3年近くに及んでおり、職員旅行中の出来事や外来会議でのやり取りは、病院Zも認識可能であったのに、いじめを防止する措置を取らなかった病院Zには、安全配慮義務を怠った責任があるというのです。

また、自殺との因果関係については次のように言っています。

男性看護師YらのAさんに対するいじめは執拗で長期にわたり、「死ねよ」などと死に追い込むような直接的な言葉を浴びせるなど態様も相当に悪質であり、他に自殺するような原因は何ら見当たらないことからすれば、Aさんは男性看護師Yらのいじめを原因に自殺したものと認めることができるということです。

この事例から学べることは、職員同士の個人的なトラブルには病院は一々口を出さないなどと言って知らんぷりしていてはいけないということです。

院内に、表立っては見えないような陰湿ないじめ行為が実は長く存在していて、被害者が精神的に追い込まれていたりすると、命に関わる事件となって突然病院を襲ってくるかもしれません。

そしてそれが、見て見ぬふりをしていた病院にも責任があると判断されるとすれば、平常の組織運営のしくみの中にハラスメント防止策を組み入れておかなければならないと言わざるを得ません。


投稿者 たつみ社会保険労務士事務所 水本智

たつみ社会保険労務士事務所03-6317-8365