たつみの自習室

2013年7月31日 水曜日

パートタイマーの労災

こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。

いわゆる労災保険は、労働者災害補償保険法という法律に基づいた国の保険で、労働者を使用する事業を適用事業としています。

つまり、正社員はもちろんのこと、パートであろうと日雇いであろうと労働者であって、その労働者を一人でも雇っていれば事業主に加入義務が生じます。個人事業であろうと法人であろうと関係ありません。

ところが、パートタイマーやアルバイトについては、仕事中の事故などでケガをしても労災保険を使わず、健康保険や民間の保険で対応するようにしているところがあります。

これは良くないですね。

どうしてそういうことをしているのでしょうか。それは、

① そもそも労災保険の加入手続きをしていない

② 労災保険を使うとその後の保険料が上がる

③ 建設業などの下請けで事故を起こした場合に元請けの労災保険を使わせてくれない

といった理由が挙げられたりします。

が、それはおかしな話です。

①はそもそも法違反です。隠すことでさらに罪が重くなります。事業主にもケガをされたご本人にも良いことがありません。

たとえ労災保険に加入していない会社で業務上の事故が起きて社員がケガをした場合でも、その社員は労災の給付を受けることができます。労災の療養補償給付は病院での本人負担ゼロですから、健保で3割負担するよりずっといいですね。

会社は手続きを渋るかもしれませんが、その場合にはご本人が労働基準監督署に直接相談すれば親切に対応してくれます。

その結果どうなるかというと、事故を起こした会社は、

◎過去2年分の労働保険料が徴収されます。

◎追徴金として上記保険料の1割が徴収されます。

◎労災事故でケガをした人に給付された額の100%(故意に未加入だった場合)または40%(重大な過失で未加入だった場合)が徴収されます。

相談に行ったことを理由にしてご本人が会社から不利益な取り扱いを受けるようなことがあれば、会社はさらに厳しい指導を受けることになります。

②はメリット制といわれる労災保険の制度で、納付している保険料の割に随分と保険給付が多い会社、つまり、労災事故が多発している会社はそれ相応に保険料を重く負担してもらいますよ、という趣旨です(逆パターンもあって、本来そちらの意味で「メリット」制と呼んでいます)。

死者が出るような大事故が続いたりするとさすがにメリット制が効いてきますが、それは労災保険のお世話にならなければ補償金額だけで会社がつぶれるような話でしょうから、逃れようがありません。

労働基準法によると、業務上の事故でケガをした社員の面倒を見るのは100%会社の責任となっています。

でも、それでは会社が突発的に莫大な額を支出することになるリスクを背負うことになるから労災保険という制度ができたのです。

つまり、労災保険は会社を潰さないための国の保険なのです。保険料が全額会社負担なのはそういう意味です。

メリット制に引っかかるのが嫌だから割高な民間保険を使うというのは的外れな考えです。

むしろ、労災保険の給付だけでは補償が不十分だから、上乗せの意味で民間保険に入っているという会社はたくさんありますし、それはもちろん肯定されるべきです。

③は、法違反です。

建設の場合、元請けの下に1次、2次、3次、4次・・・と下請けがぶら下がっていて、万一の場合の責任の所在がはっきりしなくなるので、労災保険は大元締めである元請けが一括して面倒を見るということになっています。

元請けのゼネコンが弱小〇次下請けの労災事故を握りつぶす話は聞いたことがありますが、実際には、継続的に仕事をもらうためには元請けに面倒はかけられないという理由で下請け側が黙って泣き寝入りするケースがあるようです。

東京労働局では建設業に対する指導監督を強化しており、実態の把握と事故防止のための対策に力を注いでいます。

いずれにせよ、労災保険は労働者を守り、会社を守ってくれる、国の(ということは営利目的のない割安な)保険ですから、加入義務から逃れようとすること自体ナンセンスですし、万一事故が起こってしまってケガ人が出たら素直に労災のお世話になるべきです。



投稿者 たつみ社会保険労務士事務所 水本智

たつみ社会保険労務士事務所03-6317-8365