【1990年代】会社における重要課題として認識される
1990年代後半の時期、長時間労働が原因とされるうつ病で社員が自殺に追い込まれたという事案(電通事件)があり、会社側が1億円を超える賠償を命じられた判決が出されたことを契機に、法令遵守とかリスクマネジメントの観点から労働者の健康管理が会社における重要課題として認識されるようになりました。
2000年代に入り、法令遵守のみならずCSRの観点から労働者の健康管理を重視する動きが出てきました。CSRは、消費者、取引先、株主、地域社会といった利害関係者に対して責任ある行動をとるべきだという考え方で、CSR向上に取り組むことが企業の社会的評価につながりました。労働者も利害関係者の一部なのだという位置づけから、会社の責任において社員の健康管理を行うことは企業価値を高めるために必要なことだと考えられるようになりました。
2010年代になって、労働者の健康状態に関する会社の関与の在り方はCSRよりも更に積極的になり、企業戦略としての「健康経営」という考え方が出てきました。すなわち、企業は労働者の健康状態を適正に管理する責任を果たせば足りるというものではなく、会社の施策として社員の健康維持・増進に取り組むことが生産性向上に結び付き、業績、従業員満足度、人材採用、社会的評価、事業継続に好影響を及ぼすという考え方に進化したのです。