医療機関の労務 解雇できない
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
医療機関に限らず、経営者が職員を解雇するというのは、一般的には非常に難しいといわれていますが、もし、その解雇が有効か無効かで裁判に持ち込まれたら、それはケースバイケースで判断がなされます。ただし、法律上、この場合には解雇できませんよとはっきり謳われているものがあります。どんな場合かを見ていきましょう。
① 職員の業務上の負傷、疾病による休業期間及びその後30日間
業務上ということですから、私的なことで負ったケガや病気、また、通勤のときのケガで仕事を休んだ場合には解雇は不可能ではありません。たまに間違える人がいるのですが、労災がらみなら解雇できないと理解している人がいますが、そうとは限りませんので注意が必要です。
② 産前産後の休業期間及びその後30日間
母体保護の観点から、法は産前産後は仕事させるなといっています。その間や直後に解雇してはいけないということです。ちなみに、有期雇用契約の方が産休に入り、途中で契約期間が終わったら、その人は仕事を辞めることになります。でもこれは解雇とは別です。
③ 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇
そういう理由で解雇するのは差別です。それはいけません。
④ 労働基準監督署などに申告したことを理由とする解雇
行政に知られたくないこと(違法行為とか)を役所に通報した職員をクビにするというのはだめでしょう。
⑤ 女性であること、結婚・妊娠・出産したこと、産前産後の休業を申し出たこと、または休業したことを理由とする解雇
寿退職とかいう言葉は昔からありますが、寿解雇はありません。また、労働基準法では産前産後の休業中およびその後30日は解雇できない(①のこと)とありましたが、⑤は男女雇用機会均等法の話で、①の前後を押さえた形です。申し出たからクビ、休業したからクビというのもだめだよということです。
⑥ 職員が育児休業もしくは介護休業の申し出をしたこと、または育児休業もしくは介護休業をしたことを理由とする解雇
これは育児介護休業法による解雇制限です。
また、個別紛争法(正式にはもっと長い名前です)には以下のようなものもあります。
⑦ 個別紛争法に基づいて、労働局長に対し、助言・指導の援助を求めたこと、紛争調整委員会にあっせんを申請したことを理由とする解雇
パートタイム労働法でも同じように、局長に援助を求めたこと、調停を申請したことを理由とする解雇を禁止しています。
だいたいパターンが見えてきましたね。労働組合法にもあります。
⑧ 労働組合の組合員であること、労働組合に加入したこと、これを結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたこと等を理由とする解雇
趣旨は、とにかく労働者の保護ですよね。経営者の一方的な都合や偏見で職員をクビにするのは許さないという姿勢です。