医療機関の労務 整理解雇
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
経営不振等を理由に、事業再編の一環として人員整理(整理解雇)を行う場合があります。この場合には、解雇される職員に非がなく、また複数名が同時に切られるわけですから、問題の規模や深刻さも大きく、裁判で争うことになるケースも少なくありません。
このため、整理解雇が有効かどうかについて多くの裁判例が積み重ねられ、現在では4つの要件が必要であるといわれています(4つ全部揃わないと有効にならないという4要件説以外に、必ずしも4つ全部が揃わなくても有効となるという4要素説があります)。
① 経営上の必要性に迫られている
倒産寸前とか、そこまでいかなくとも3期連続大赤字だとか、経営的に考えてやむを得ない事情があること
② 解雇回避措置をとっている
人員削減は最後の手段であって、それに踏み切る前に、職員を配置転換させる、役員報酬をカットする、管理職手当をカットする、パート・アルバイト職員を解雇(雇い止め)する、希望退職を募るなど、整理解雇をできるだけ回避する経営努力を行ったこと
③ 解雇対象者の選定が妥当である
解雇の対象となる職員の選定基準(例えば、出勤状況、勤務態度、勤務成績、勤続年数、年齢、扶養家族の有無、再就職の困難さなど)が合理的であり、かつその基準の適用が公平になされていること
④ 解雇に至る手続きが妥当である
整理解雇しなければならない事情や経緯などを労働組合や職員に説明し、経営上の数字を明らかにして理解を求め、職員側の事情を十分に聞いた上で、協議を尽くすなど解雇手続きが妥当であること
経営側としても好き好んで職員を整理解雇したいとは思わないと思います。ですが、一部の職員を削ってスリムにならないと病院全体が潰れてしまう。潰れてしまったら職員全員が路頭に迷う。地域社会にも大きな迷惑をかけてしまう。それは許されない。そういうギリギリの状況の中で苦渋の決断をするわけです。非常に困難な取り組みですね。