外国人の雇用 オーバーステイの従業員の労災事故
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
そもそもオーバーステイなどの不法滞在者と分かっていたら雇用すべきではありませんが、労災事故が起きてしまってからオーバーステイ状態だと判明することはあり得ます。
この場合の権利・義務の話として、業務上の災害に遭った労働者がたとえ不法就労者であっても、会社は保障をしなければなりません。
ケガであれば療養の費用を負担しなければなりませんし、療養のために働けないから給料が出ないということであれば休業補償として平均賃金の6割を支払わなければなりません。
これは法律上決まっていて、会社としてはやるべきこととしてやるしかありません。
まずは治療しなければなりませんから病院に連れて行くことになると思いますが、労災を使うか会社の100%負担にするかは自由です。いずれにせよ本人に負担させることはできません。
次に、労災事故が発生して死者が出たり休業する人が出たりした場合は労働基準監督署に報告しなければならないことになっています。
続いて、本人が回復したら解雇すべきですが、注意しなければならないことがあります。
それは、業務上の事故で休業した労働者はその休業期間中およびその後の30日間、解雇することができないという法律がある点です。不法就労者にもこの法律は適用されます。
この解雇制限には30日以上前に解雇予告を行う必要があり、そうしない場合には解雇予告手当を支払わなければなりません。
会社のとるべき措置は、休業明けに30日分の解雇予告手当を支払って即日解雇します。一日も早く雇用関係を切る道を選択するということです。
つまり、大きな流れとしては、人命を最優先して治療、療養させ、その次に不法就労者としてどう対処するかを考えます。
労災上の手続きもありますから、被災者が不法就労者であることを労働基準監督署に報告し、アドバイスをもらうとよいでしょう。
被災者には療養補償、休業補償についてきちんと説明してできるだけ不安を取り除き、療養に専念してもらいましょう。休業後の解雇と解雇予告手当の支給についても説明し、それをもって帰国することを勧めてください。
入管にも不法就労者が労災で休業中であることを報告し、休業明けにはすぐ解雇する予定であることを伝えます。
万が一、本人が休業中に行方不明になった場合には、その時点で入管に報告します。
ポイントは、会社が労働基準法違反や不法就労助長罪に問われることがないように、各役所にまめに報告・相談をすることです。