賃金 有休取得したら皆勤手当なし?
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
一定の条件(勤続年数と出勤率)を満たせば、給料ありで仕事を休めるのが有給休暇です。
事業主としては、働かないのに賃金を支払わなければならないのは不合理とも言えますが、これはノーワーク・ノーペイの原則の例外で、法律が労働者に認めた権利です。
ノーワーク・ノーペイは、労働者が労働を提供する代償として使用者がお金を支払うという労働契約の考え方の裏返しの表現で、働かないなら賃金を支払わないということです。だから有休はノーワーク・ノーペイの例外というわけです。
なぜ例外を認めるのかというと、憲法が人たるに値する生活の保障を謳っていて、使用者の論理に優先して労働者の生活を厚く考えるべきだといっているからです。
ということで、有休を取得したからという理由で労働者に不利益な扱いがあってはいけないという法律も存在していて、有休取得を躊躇させるような賃金制度はよろしくないとされています。
つまり、有休を取得するということは仕事を休むわけだから皆勤手当は出しませんという会社の賃金制度は法令違反→憲法違反になりかねません。
が、事情を考慮すると一概にはそうとも言えないという事例があります。
タクシー会社で、組合とも話し合って、月ごとの勤務予定表を作って、それに則って乗務員の勤務日数や時間を決めていました。
予定表通りに勤務したら月4000円くらいの皆勤手当が出、予定表の変更を余儀なくされる欠勤(有休を含む)が1日あったら手当は半額、2日以上あったら出ないというルールです。
乗務員のAさんは予定表ができてから有休を取って休んだために皆勤手当は半額とか無しとかになりました。
こういう場合はどうなのでしょうか。
Aさんは会社に対して有休のみの欠勤の月について皆勤手当を支払えと主張しました。
でも、会社としてはきちんと手続きを踏んで予定表を作っていて、それに穴が急にあいてしまうと代替要員の手配が難しくなり自動車の稼働率の確保に支障が出てしまう心配が生じます。
そういう事業運営上の問題発生を避けたいがために皆勤手当の制度を作って運用しているのです。
つまり、乗務員が出勤に関して事業運営に協力してくれたら手当を出しますという趣旨の制度なわけです。
結論としては、会社のルールは有休を取らせないようにする目的のものではないし、有休取得を抑制するような現実もない(手当の金額がそんなに大きくない)から、法令違反とまでは言えないということになりました。→Aさんの負け。
ただ、このような例は少ないです。トラブルを起こさないように制度を考えるなら、皆勤手当は有休を出勤とみなすのが無難です。
ちなみに、有給休暇の権利が発生する要件である出勤率の計算では、有給休暇を取得した日は出勤した日とみなされます。