医療機関の労務 就業規則の提出義務
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
労働基準法第89条によると、職員数が10名以上いる事業所においては、就業規則を作成し、管轄の労働基準監督署に提出することが義務付けられています。
ここでいう職員数10名以上とは常時使用する職員数をいいますが、常時とは正職員のみの人数だけではなくパートタイマーやアルバイトなどの従業員も含めることになっていますので、多くの医療機関では就業規則を定めて労働基準監督署に提出しなければならないことになります。
ただし、診療所にMS(メディカル・サービス)法人が入っている場合は、別々の組織として考えますので、例えば、診療所の正職員4名、パート職員5名、MS法人職員4名で運営している診療所では、就業規則の作成・提出の義務はありません。また、派遣社員が入っている場合も同じ考え方です。派遣社員は派遣元の会社に雇用された別組織の人ですので、診療所の職員数にはカウントしません。
ところで、市民病院など公的病院の職員は公務員ですが、こういったところも就業規則の作成・提出義務はあるのでしょうか。答えはイエスです。地方公共団体の行う事業のうち「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」(労働基準法別表1⑬)の労務管理については地方公務員法の適用を受けることがなく、労働基準法が適用されることになります。従って、就業規則を定め労働基準監督署に提出しなければなりません。
なお、就業規則を労働基準監督署に提出すべき事業所が提出をしていなければ(作成はしていても)89条違反になりますので、同法120条により30万円以下の罰金の適用を受けることがあります。
しかし、そういう法律があるならやむを得ないから作成して提出しようかという診療所があったとしたら、残念ながらその診療所はすでに世の中の流れに遅れていると言ってよいでしょう。法律を守るというのは最低ラインをクリアするというだけの話です。そんなギリギリのラインでやっと重い腰を上げるようでは、労務トラブルが発生したときの財務リスク、訴訟リスクに対応できるはずがありません。