就業規則 服務の基本①
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
営業に行ったと思ったら実はパチンコ屋へ。パソコンに真剣に向き合っていると思ったら実はゲームに夢中。注意したら開き直って逆ギレ。「国会で決めたわけでもない会社のルールなんて従う義務はない。調査だの制裁だのあり得ない。拒否!」
他人の物を盗んだり、制限速度を超えて運転したりしたら、警察に捕まって処罰されますが、それは「こんなことをしたらこんな風に罰するよ」という国のルールに基づいてのことです。
では、会社という私的な組織が職員を縛るルールを作ってもいいのでしょうか。不審な行動があったら独自に調査してもいいのでしょうか。悪いことをした職員を罰してもいいのでしょうか。
答えはイエスですが、当然と思っていたことも、開き直って反論されると、「本当にいいのだろうか」と思ってしまうことはあると思います。
最高裁判所で出された判決の中から一つ紹介しましょう。
企業秩序は、企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠なものであり、企業は企業秩序を維持確保するため、これに必要な諸事項を規則をもって一般的に定め、あるいは具体的に労働者に指示、命令できることは当然のことである
また、調査や制裁については次のように言っています。
企業秩序に違反する行為があった場合はその内容、態様、程度等を明らかにして、乱された企業秩序の回復に必要な指示、命令を発し、または違反者に制裁として懲戒処分を行うため、事実関係を調査できるものとする
ところで、服務規律と懲戒事由はどんな関係にあると思っておけばよいでしょうか。
懲戒事由は、「こんなことをしたら懲戒するよ」というときの、「こんなこと」を具体的に述べたものです。懲戒とは罰するということですから、それなりに重大な悪い行いですね。
それに比べれば服務規律は違反しても懲戒には直結しないような軽さがあります。心がけ的なものだったり、管理・運営上の注意だったりします。
しかし、物事には程度というものがあって、服務規律であっても超悪質な違反だったら懲戒の対象にしておかないといけないでしょう。
そこで、懲戒解雇の事由の中に「服務規律等に違反した場合であって、その事案が重大なとき」などという項を入れ、訓戒、減給、出勤停止などの懲戒事由には「服務規律等に違反した場合であって、その事案が軽微なとき」などと入れておくとよいと思います。
このように、懲戒事由と服務規律はリンクさせておくことが大事です。
平成16年1月の法改正で解雇の扱いが変わりました。
ポイントは、就業規則に記載のない事由では解雇が無効になるということです。
組織を破壊するようなことをした人には出て行ってもらうしかないという場合があります。
どういうときがそれに当たるかを具体的に書き並べておかないと、超危険分子を組織から排除することはできないのです。
組織を守る(=そこで働く人を守る)ためには、考えられるリスクをちゃんと考えておき、それを避けるためのルールやしくみを前もって準備しておかなければならないのです。
事後対応では守れないのです。