労働時間 特別条項付き協定
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
時間外労働の労使協定を結んでいても、無制限に残業させていいわけではありません。
労働基準法には時間外労働の限度時間が規定されています。1週間に15時間、1か月に45時間、1年間に360時間といった具合です。
36協定の書式にも「延長することができる時間欄」という枠があり、1日、1か月、1年と区分して記入するようになっています。
当然、記入する数字は、法律が規定する限度時間以内の数字でなければなりません。
しかし、もしかしたら、限度時間を超えてさらに労働時間を延長しなければならない特別な事情が生じることがあるかもしれません。
そこで、そんな臨時的な限度越えの延長を認める協定を締結すれば、その一定の時間まで労働時間を延長できるということになっています。これを「特別条項付き協定」といいます。
さて、ここまでくると、平成22年4月の法改正に取りかかることができます。
この法改正の趣旨は、労働時間を短くすること、労働者を休ませることにあります。
改正法では、この特別条項付き協定について、つまり、限度越えの臨時的時間外労働について、
①割増賃金率を定めること
②労働時間はできるだけ短くすること
③割増賃金率は2割5分を超えるように努力すること
と、定められました。
どういうことでしょうか。
時間外労働については、従来の36協定と特別条項付き協定の2段構えで残業を法的に認めるわけですね。
つまり、日常的にありがちな残業と臨時特別的に認めるスペシャル残業です。
そのうちのスペシャル残業について、本当に特別な事情があるときだけだぞと特別扱いにして、その延長時間は極力ゼロに近づけろと言い、どうしてもやるなら割増率は2割5分以上に設定せよと、長時間労働の阻止に向けてプレッシャーをかけてきているのです。
ただ、③の2割5分以上というのは努力義務ですから、努力したけれども2割5分を超える割増率はやっぱり無理だという場合は2割5分でもやむを得ません。
注意することは、
特別条項付き協定についての改正ですから、そこまでいかない時間外労働の限度(1週間に15時間、1か月に45時間、1年に360時間)に収まっている会社にとっては関係ないということです。
また、他の法律で時々見かけるような、中小零細企業には当てはまらないという規定ではありません。企業規模に関係なく適用されます。
それから、この限度時間についての規定が適用されない業種がいくつかあります。建設業、自動車運転の業務、新技術の研究開発などです。もちろん、これらの業種については無制限で時間外労働OKということではありません。別に定める法令がありますので、そちらに従ってくださいという意味です。