就業規則 なぜ懲戒できるのか
こんにちは。江東区のたつみ社会保険労務士事務所代表、水本です。
民間企業の場合、経営者と従業員との間の雇用関係は「私的な契約」で結ばれています。
契約締結において両者の立場は法的に対等ですから、経営者が一方的に従業員を懲戒できるというのはおかしい話ではないかとも考えられます。
でも実際には従業員が不祥事や事件を起こしたとき、会社はその従業員に懲戒を与えることがありますし、裁判になってもその懲戒は認められたりします。
なぜでしょうか。
それは、経営側が「うちの会社では、これこれこういうことをしたら、こんなペナルティーがあるよ」という説明をして、従業員が「はい、分かりました」と受け入れた上で雇用契約を結んでいるからです。
いつ、そんな説明を受け、いつ、同意したのでしょうか。
「説明」の方は、就業規則に懲戒の種類とその事由があらかじめ規定されています。
「同意」については、入社するときに「就業規則に従います」という内容の誓約書を出しています。
これで契約上、会社は従業員に対する懲戒権を持ったことになります。
ということで、入社時の提出物の一つである誓約書の内容に「就業規則を守る」旨を必ず入れておかなければならないわけです。
ただし、規定しておけばどんな内容でも懲戒できるわけではありません。法が裁くべき犯罪が社内で発生した場合に会社が国に代わって犯人を罰することができるわけがありませんし、社長に逆らったら解雇するといった乱暴な規定がまかり通るわけもありません。
ポイントになるのは企業秩序の維持です。従業員の行為が社内に大きな影響を及ぼして、適正な事業活動が妨げられた場合には、その従業員に何らかの責任を取ってもらわないと示しがつかないという場合に懲戒処分が役に立ちます。事前に知らせていないことで懲戒はできませんから、就業規則には具体的に懲戒事由を規定しておく必要があります。